不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
朝から、襲われると勘違いし身構える姿に、揶揄って誤魔化し、昂る半身に気づかれる前にと浴室へ隠れたのだ。
そして、香恋がいなくなり、浴室で真っ先にすることはシャワーを全開にして、半身を鎮める。
漏れる生々しい己の声が響いていた。
そんなことをしていたなんて感じさせないよう、朝食にホットサンドを用意する。
自分の準備をし時計を見れば、出勤時間が迫っていた。
香恋がまだ来ないところをみると、まだ準備に手間取っているのだろう。
隣の部屋のドアノブに手をかければ、ガチャリと開く。
不用心だろ…
奥へ入っていけば、姿見の前でヘアーアイロンと格闘中の香恋が、髪が決まらないと悲しい表情で振り向く。
可愛いけどな…
彼女の毛先を指で絡め、耳にかけてやる。
すると、耳の裏につけたキスマークが見えてきて、そこを指の腹で撫でた。
会社で会えない間、余計な虫がつかないようにつけた俺のしるし。
先に出ることを告げ、玄関を出ようとすると後を追いかけてきた香恋が、「いってらっしゃい」と。
表現できない感動がおこり、「行ってきます」と言う自分に照れたりする。
ドアノブを掴んだが、振り向き彼女の唇にキスして出たのだ。
こんな照れ臭いキスなんて初めてだった俺は、1人きりのエレベーターの中で、赤らめた顔を覆うのだった。