不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

「私のことは、今はいーよ。もう、興奮しないで。おかわりするでしょ…店員さん呼ぼう」

店内いる、店員さんをさがしていたら、カウンターに座る男性に目がいった。

あれ?

「あれって…」

優香も気がついたらしい。

あんな色気ある背中をした男なんて、そうそういない。

隣にいる女性に肩をゆすられて、横をむくシルエット。

「あー他にも食べもの頼もうよ。なににする?」

優香なりに、気を逸らさせようとしてくれたのだろうが、気づいたら、気になって仕方ない。

プライベートで、主任が女性といるのを見てしまうと心が穏やかでいられない。

もしかしたら、今日はその彼女と過ごすのかと思うと、ズキと心が痛い。

ヤダ…その手で主任に触れないで。

私の願い虚しく、女性は、主任に寄りかかって腰に手を回していく。

いてもたってもいられなくて、「優香、ごめん。これ、私の分」とテーブルにお金を置いた。

「見てられなくて帰るの?それなら私も帰るよ」

「ううん、主任取り戻してくる」

私の勇気ある行動を讃えるようににんまりと笑う優香。

「頑張れ。香恋の頑張りに応えない男なら、張り倒しちゃえ」

「…そこまではしないよ。たぶん」

「とりあえず、いけー」

と、主任目掛けて、指を指す。
< 107 / 183 >

この作品をシェア

pagetop