不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「私のことは、今はいーよ。もう、興奮しないで。おかわりするでしょ…店員さん呼ぼう」
店内いる、店員さんをさがしていたら、カウンターに座る男性に目がいった。
あれ?
「あれって…」
優香も気がついたらしい。
あんな色気ある背中をした男なんて、そうそういない。
隣にいる女性に肩をゆすられて、横をむくシルエット。
「あー他にも食べもの頼もうよ。なににする?」
優香なりに、気を逸らさせようとしてくれたのだろうが、気づいたら、気になって仕方ない。
プライベートで、主任が女性といるのを見てしまうと心が穏やかでいられない。
もしかしたら、今日はその彼女と過ごすのかと思うと、ズキと心が痛い。
ヤダ…その手で主任に触れないで。
私の願い虚しく、女性は、主任に寄りかかって腰に手を回していく。
いてもたってもいられなくて、「優香、ごめん。これ、私の分」とテーブルにお金を置いた。
「見てられなくて帰るの?それなら私も帰るよ」
「ううん、主任取り戻してくる」
私の勇気ある行動を讃えるようににんまりと笑う優香。
「頑張れ。香恋の頑張りに応えない男なら、張り倒しちゃえ」
「…そこまではしないよ。たぶん」
「とりあえず、いけー」
と、主任目掛けて、指を指す。