不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
わからないのは私だけらしく、ニヤニヤと笑う3人を無視して、業務に戻るのだった。
帰り際、主任からメールが届いた。
『少し遅くなるが、コンフォルトで飲まないか?』
金曜の夜のお誘いは、部屋ではなく外だということに嬉しくなる。
やはり、部屋ばかりだとセフレなのかとマイナス思考になりがちだが、こうしてデートに誘われると、言葉がなくても気持ちがあるようで嬉しい。
『はい。先にお店で待ってますね』
はじめて、了解と可愛らしい絵文字のスタンプが返ってきて、なんだか、心がウキウキする。
そして、歩いていると、敷地内の東屋に向かって歩く聖也さんと飯島さんがいるのが見えた。
一瞬にして、心がザワつく。
どうして…
よくない方向へ思考が移りそうで、強く目を閉じて、約束の場へ向かった。
コンフォルトのお店のオーナーとは、聖也さんのおかげで顔見知りになり、「いつものでいいの?」と声をかけてくる。
「はい」とお願いして、本日お勧めメニューのミニトマトのベーコン巻きと焼き茄子のブルスケッタをツマミにして、時間を過ごしていた。
なんでもないふうを装って待っているが、内心穏やかでいられない。
なぜ?
彼の言葉を待つと言いながら、本音は、彼の態度だけでは不満で、彼から何も言葉がないのが不安でしかないのだと気がついてしまう。