不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「ちゃんと言うから、泣きやんでくれよ」
一呼吸おいて、決意を固めた表情で、私の両肩を掴んだ。
「好きだ。大切にする。だから、恋人として付き合ってください」
「はい」
今度は、嬉し涙で顔面はぐちゃぐちゃの私。
「ずっと、言えなくて不安にさせて、ごめん。香恋に催促されないと言えないなんて、情けない」
嬉しいのに情けないやらで、目に涙を溜めて複雑そうに笑っていた。
ガチャリと303号室のドアが開き、住人が廊下に顔を出した。
そして、冷ややかに視線をよこし、ドアを強めに閉めていく。
聖也さんと私は、お互いに顔を見合わせてクスリと笑い、指先を唇にあてて、シッーと。
私の肩を抱いて、301号室のドアを開けた聖也さんと一緒に、玄関内へ。
お互いにチュッ、チュッとキスの戯れが始まり、私は、彼を襲った日から始まる日々を…
思い出していた。
「こら、キスの最中に、何考えてるんだ?」
俺に集中しろとばかりに、唇に軽い痛みがはしる。
「好きだなぁって思ってた」
「俺も好きだなぁって思ってたよ」
そして、私達は、恋人としてやっと週末を過ごすことになった。