不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
だから、2度とまとわりつかないでくれ。
香恋と過ごす時間を無駄にしたくない思いからだった。
「お客様、店内でのトラブルは、ご遠慮願います。当店への出入りは禁止させていただきましょうか?」
新さんの笑顔が、完全に引き攣っていた。
飯島が怒って出ていき、スッキリとする。
「まったく…もう少しうまくやれよ」
「我慢の限界だったんだよ」
その後の、新さんと香恋のやり取りに時間ばかり気になり、「もう、帰るぞ」と香恋を連れ出したのだ。
タクシーを捕まえて、後部座席に座るなり、香恋は、見当違いに落ち込んでいる。
「あの…私、勢いであんなことしちゃいましたけど、お知り合いだったですよね?私、余計なことしたんじゃないですか?」
「逆に、助かったのは俺。あのタイミングで、話合わせたお前サイコーだよ。あいつ、製品課にいる同期なんだけど、何かとまとわりつかれて迷惑してたんだよ」
「綺麗な方でしたよ」
「嫉妬?」
やはり嫉妬してくれてるのかと、そう思えて口に出ていた。
突然、スーツの襟を掴んでキスし、下唇を軽く噛んできた香恋に驚かされる。
「嫉妬です」
煩わしいだけだった言葉が、こんなに甘く聞こえる日がくるとは思いもしなかった。
愛しさに抱き寄せ頭部に何度もキスをするたびに、昂る気持ち。