不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「歩けそうか?」
「…たぶん」
毎回ながら、俺の激しい行為が彼女の体に負担を与えているのだ。
申し訳ないと思うが、やめれない。
悪かったなと頭を撫でることで詫びて、俺のスウェットの上を貸した。
大抵、部屋にいる間の香恋は俺のスウェット姿だ。
そうさせているのは俺なのだが、裾からでる細くもなく太くもない肉付きのいい足と、袖が長いせいか指先しか出ていない袖が、俺の性癖に届くのだ。
何度か、朝までいた女が勝手にシャツやスウェットを着ている姿を見たが、こんなふうに下心を抱いて、わざわざ着せるようなことは彼女が初めてだ。
風呂から出てきた香恋の髪はまだ濡れていて、つい、指先で手招きしていた。
「まだ、濡れてるぞ」
香恋が首にかけていたタオルで拭いてやると、俺と同じシャンプーの香りがした。
「同じ香りがする」
同じで当たり前なのに、香恋から香る匂いは特別に感じて、嗅ぐのをやめれないでいた。
「メイク落としシート、なくなりましたけど、どなたかの忘れ物ですよね。新しく買い直しておきましょうか?」
大きな勘違いに、言葉を失う。
「新品だったろ」
つい、確認してしまった。
「はい。だから、余計に使って申し訳ないと」