不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
製品管理課の資材部に、やっと、適任者が見つかり、ホッとする。
その報告がてら、香恋を呼び出し、たまにはデートでもしようと連絡したのだ。
資材部から、人事部へ向かう途中、飯島とかち合う。
多分、人事部から来たのであろう。
「大小路くん、ちょっといい?」
馴れ馴れしく名前呼びしないことに、眉が上がる。
どうしたんだ?
東屋で腰を下ろして話をすることになる。
「あの…私、迷惑ばかりかけて本当にごめんなさい。相手の気持ちも考えず、言いたい事がすぐ出てしまうせいで、不快な思いさせてたんだと今回のことで、よくわかったの。大小路くんにも、資材部のみんなにも、申し訳ないと思って、謝ればいいってものじゃないのはわかってるわ。だけど、大小路くんには、謝りたかったの。私、今の職場では、頑張るわ」
「じゃあ」と、言いたいことだけ言って帰って行く。
心に響くものはなく、「あっ、そう」とだけ返して終わった。
気にもならない女だと、一切感情を揺さぶられることもない。
俺が女なら冷たい男だと思う。
頑張れよとかさえ、言ってやれない。
こんな俺が、香恋になると感情が動くのだから…と失笑して歩きだした。