不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
新しい主任も決まり、人材を増やして皆の負担を減らす為に人事部へ赴く。資材部の求人募集をかけてもらう手続きは、俺が資材部での最後の仕事となった。
電話一本で済む話が、なぜ、俺が?出向かなければならない。
その理由は、俺の穏和さとこの顔だ。
人事部のボス、年長の女性は気難しい人で、彼女をいち早く動かす為に、ご機嫌取りへ向かわされたのだ。
ほんと、穏和で、人当たりよくするのもやっかいだ。
香恋に癒してもらわなければと、彼女が待つ店へと向かった。
店に入り、カウンターに座る香恋がこちらを見ていた。その隣に座りマスターに『いつもの』と言う。
「お疲れ様です」
「香恋もお疲れ様」
笑顔で香恋にお疲れ様と言われるだけで、疲れが吹き飛び、愛し表情を指先で撫でる。
「名前呼んでくれないの?」
2人きりになれば、呼んでほしいと言ってるのに、なかなか名前を呼んでくれない。
「俺、彼氏だろ?」
「いつから、私の彼氏になったんですか?」
いつもの香恋なら、頬を染めて照れてるはずが、今日はご機嫌が悪いらしい。
「酷いな」
カウンターの下で手を繋いで、ご機嫌をとる。
頬を染めているが、ご機嫌は治らない。