不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

ビールが出てきて、味わうより喉に流す勢いで、飲んだ。

それも、香恋のせいだ。

どうしたんだ?

「彼氏って言いますけど、なんの言葉も聞かせてもらってません。セフレの間違いじゃないんですか?」

おいおい…俺、言ったよな。
いや、言ってない。
言った気になってたが、はっきりと言葉にしていない。

「前の自分はどうしようもできないけどさ…今は、香恋だけだよ」

「そんな軽い感じで言われても、嬉しくありません」

今日の香恋は、手強い。

「どう言えば満足するんだ?」

「本当にわからないんですか?」

好きだとか、付き合ってとか…

言葉がなくても、俺の態度で伝わているだろう。

なのに、そんなに言葉が必要なのか?

香恋が出て行こうとするので引き留めたが、店を出て行ってしまった。

「お前は、言葉が足りないな」

マスターなりのアドバイスらしい。

すぐに追いかけて香恋を捕まえて、手を繋いで歩く。

何度かあったチャンスで、告白しそびれて、今更、言葉にするのは照れくさい。

彼氏だろって言って、これだけ、態度で示しているのだ。

好きとか付き合ってとか言わなくても、わかるだろ。

そう思っていたのは、俺だけだった。
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