不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「ずっと、言えなくて不安にさせて、ごめん。香恋に催促されないと言えないなんて、情けない」
ガチャリと303号室のドアが開き、住人が廊下に顔を出し、迷惑そうにドアを強く閉めていった。
共有廊下で、傍迷惑な痴話喧嘩に聞こえたのだろう。
お互いに顔の前で、静かにと指を立てた。
ご機嫌がなおった香恋の肩を抱いて、俺の部屋のドアを開けた。
仲直りのキスが始まり、お互いに戯れていた。
その最中、どこか上の空な香恋。
どこかに思考が飛んでいるらしく、キスに集中していない事が伺える。
「こら、キスの最中に、何考えてるんだ?」
唇に軽い痛みを与えて、意識を戻してやった。
「好きだなぁって思ってた」
まったく、敵わないよ。
「俺も好きだなぁって思ってたよ」
これからは言葉にするから…と唇を塞ぐのだった。