不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
課長は、なぜか、怖い顔を真っ赤にさせて咳き込んでいた。
みんなが、その理由を知るのは、お昼の時間だった。
「課長、お弁当作ってきたんです。一緒に食べましょう」
語尾にハートが飛んでいる気がするのは、私だけではないらしい。
「えっ、どういうこと?」
「私、課長のこと好きになったんです。だから、課長のこと好きにならないでくださいね」
中村さんの意味のない牽制に、皆が驚いている。
「いや、こんな怖い顔のどこが」
高木さんの暴言に、中村さんが怒りだす。
「課長の良さは、私だけが知っているからいいんです。怖い顔してますが、本当は優しい人なんです」
「…課長は黙秘ですか?」
「うるさい。俺も戸惑ってるだよ」
「私、諦めませんからね。歳が離れてるとか気にしません。それを言い訳にして断らないでくださいね」
「会社に出てきたのって、課長目当て?」
「小野田先輩は、好きな人と一緒にいたくないですか?」
「…いたいわよ」
「そういうことです。だから、仕事も頑張って、今までの私じゃないって証明してみせるんです。そしたら、付き合ってくれるって約束してくれたんです」
ぐほっと咳き込む課長。