不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
みんなが課長を冷ややかに見つめた。
罪作りなことをして、若い子をたぶらかして
るんじゃないかと…
「中村、ニュアンスが変わってる。頼む、誤解を生む発言はやめてくれ」
「えー、課長、頑張ってたら、付き合ってもいいって」
「考えると言っただけだ」
タジタジの課長は初めてで、満更でもない様子だった。
中村さんが休んでいる間、課長はこまめに連絡したり、家にまで会いに行き、中村さんを説得していたらしい。
そのうち、中村さんは、課長の親身になってくれる優しさに惹かれて、好きになってしまったという。
押しに弱い課長のこと。
中村さんと付き合うのも時間の問題だろうと皆が思っている。
まぁ、理由は下心ありきだが、中村さんの頑張りは目を見張る。
皆が感心するほどの変わりように、恋のパワーってすごいと思ってしまう。
オセオセの中村さんは、毎日、昼休みは課長にベタベタと甘えて、それを可愛いと思って見ている私達。
「課長、もう、中村さんに堕ちてあげてくださいよ。もう、歳の差カップルは目の毒です」
「そうですよ。私、心入れ替えて真面目にお仕事してますよ。頑張ってますし、これからも頑張りますから、付き合ってください」
課長の腕に絡みついて、上目遣いでの甘えは、私にはできない技だ。
羨ましいと…思ったのは、誰にも言えない。
「俺はバツイチの歳上だぞ。ダメだろ。親御さんが泣くぞ」