不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

「でしょ。もうね、思春期の若者かって感じ」

「わかります」

なぜか、中村さんと優香は意気投合して手を取り合っている。

出勤しだして数日なのに、洞察力のある中村さんに、私はタジタジとなるのだ。

昼の始業時間が始まり、早速。

「如月さん。悪いけど、この書類を営業まで持ってて再提出お願いしてきてくれる?」

「はい」

中村さんに感化された私も、いつになく張り切って返事してしまう。

「頼んだよ」

一瞬だけ、聖也さんと視線が絡み、甘く微笑まれた気がして、余計に、張り切って向かった。

営業の部署は、すぐ上の階にある為、階段を使う。

上がっていると、上から勢いよく駆け下りてくる男性とぶつかりそうになって、よろけた。

「うわっ、如月さん、大丈夫?」

「あっ、はい。大丈夫です。宮内さんは大丈夫です?」

無意識に、顔にかかった髪を耳にかけながら、相手の体に異変がないか確かめる。

「…俺は大丈夫。ほんと、ごめんね。経理に提出した書類の不備に気がついて、慌てて降りてきたんだ」

「あっ、これですか?」

「…そう、これ。助かる…直したら持っていくよ」

「はい、お待ちしてます」

経理課に戻って主任に報告した後、しばらくして、先程の宮内さんがやってきた。
< 148 / 183 >

この作品をシェア

pagetop