不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「如月さん、さっきはごめんね。お待たせしました。これ、お願いします」
「ありがとうございます」
「いや…こっちこそ、気がついてくれてありがとう」
気がついたのは、主任ですけどね。
なかなか、帰ろうとしない宮内さん。
「まだ、何か?」
「如月さん、彼氏いる?」
えっ…
ニコって微笑まれ、薄らと頬が熱くなる。
頭に浮かぶ聖也さんがいたからだ。
「…はい」
「そうか。相手って社内の人?」
恋愛禁止ではないが、知らない人に言うことではないと思うので。
「内緒です。お仕事に戻られないと怒られますよ」
詮索されたらボロが出そうで、早く戻って欲しい。
「…ふーん。難攻不落の如月さんだったのにな。残念…」
難攻不落って、なんなんでしょう?
もう、どうでもいいって雰囲気で、宮内さんは背を向けて経理課を出ていった。
私は、気にとめることもなく、不備の書類を再提出ボックスに入れて、作業に意識を向けた。
営業の男性の背を気にして見ている主任を、ほくそ笑む人達がいた。
3時から10分の小休憩。
主任が経理課を出て、私は、お手洗いへ行くふり。
先程、主任に呼ばれ、書類を渡されたのだが、付箋が貼ってあり、[休憩時間、一人で保管庫にきて]と。