不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

「こら、中村、あんた、結婚云々言う前に、先輩に対する口の聞き方覚えな」

お酒も入っている優香が激怒して、手元にあるお手拭きを中村さん目掛け軽く投げる。

「ひどい。主任、見てました⁈小野田さんが意地悪言って、愛梨、悲しいです」

優香からケッ、という声が聞こえきそうな勢いで、憤慨している。

「中村さんに、悪気ないのはわかっているけど、もう、社会人なんだから、もう少し、言葉を選んで話できるようになろうね」

優しい口調で、主任は中村さんにお叱りの言葉を投げ、「小野田さんも、言い方考えて、物を投げるのは良くないよ」と、嗜める。

2人は、渋々顔で、「すみませんでした」とお互いに謝っているが、納得はしていない。

自分のせいで空気が悪くなったと感じた山崎さんは、早々に、奥さんと子供が待ってるからと言い訳して帰ってしまう。

私は、怒りの矛盾の行きどころがなく、目の前の料理とあまり飲めないビールで時間をつぶすしかなかった。

なぜなら、週末の金曜は、どうしても帰りたくない理由があるからで、隣は、いちゃつき、主任と酔った(ふりの)中村さんは、お互いにお酒をジャンジャンと飲ませあいしているし、フラストレーションが溜まっていく。
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