不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
以前、高木の陳腐過ぎるとの言葉が、脳裏に過るのだ。
そして、しばらくしてやってきた男が、馴れ馴れしく香恋を呼ぶのも気に食わない。
話し声に、聞き耳を立ててキーボードの打ち間違いをするほどだ。
俺らしくなく、集中できないでいる。
若干、前より愛想がよくなった香恋は、以前と違い、俺以外の男と会話が続くのが面白くない。
パソコンの画面越しに見える宮内って男の目は、香恋に恋する男の目ではない。
なんというか、薄ら寒い目つき。
恋する熱量がないのだ。
前の俺なら気がつかなかっただろうが、恋を知った今なら、恋する男の表情や態度がわかるようになったと思う。
「如月さん、彼氏いる?」
直球に、香恋も驚いているが、ここにいる皆が耳を傾けて聞いていたらしく、手が止まっている。
「…はい」
俺が彼氏だと鼻先で笑い勝ち誇っていたが、間をおいてから答える香恋に若干苛立つ。
なぜすぐ言わないと不満で、無意識に2人をじっと見ていた。
まさか、あーいう男もタイプなのか?
わけのわからない嫉妬がおこり、グッと拳を握る。
「そうか。相手って社内の人?」
「内緒です。お仕事に戻られないんですか?」
そうだ、用が済んだなら帰れと、念をおくる。
「…ふーん。難攻不落の如月さんだったのにな。残念…」
男は、辺りを見渡し何かを探る。そして俺と視線がぶつかる。
こちらは隠す気はないので、視線で威嚇する。
向こうは、香恋の彼氏が俺だと分かったのだろう。
苦々しく睨んできた。