不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
だが、焦りは禁物。
いきなり結婚は、さすがに彼女でも躊躇うだろう。
だから、彼女の方から望むように種を蒔けばいい。
一緒に夕食の片付けをしつつ、たわいもない会話をしながら、同棲へ誘うタイミングを見計らう。
「なぁ」
「なんですか?」
「隣と行き来するの面倒だろ。もうさ、一緒に住まないか⁈」
「本気、ですか?」
「本気だ。まだ付き合って短いけど、もう香恋のいない日常なんて考えられない」
「えっ?」
「俺をこんなふうにした責任とれよ」
ガバッと抱きしめた。
恋する気持ちが、こんなにも俺を弱くするとは…女なんて、他にもいるのに香恋じゃないとダメなんだ。
理由なんてわからない。
ただ、彼女に本気だからとしか。
「抱きしめたいです」
「抱きしめろよ」
俺を抱きしめて見つめてくる香恋が愛おしい。
「で、どうなの?」
かっこつけて余裕ぶった口ぶりだが、実は、催促を促すほど余裕なんてない。
本気になると、男は誰もがこうなるのだろうか?
「責任とって一緒に暮らします」
「後から無しとか言うなよ」
「言いませんよ。聖也さんと暮らせるなんて、幸せです」
ふふふと笑う香恋は、どこか余裕がある気がする。