不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
それなりに遊んでいた俺が、唯一、気をつけて、誰にもしたことのないこと。
香恋だけが、俺を無防備にする。
香恋を独占できるならと誘導していたが、ここまで素直に動いてくれると、不安にもなる。
まあ、一度で妊娠なんてしないだろうと思っていたが…
「ここにね、赤ちゃんがいるの。2ヶ月だって」
喜びで言葉も出ないほど浮かれて
立ち上がって背を向けた。
思い通りに事が運び過ぎて、怖いくらいだ。
企みが成功し、ニヤける顔は、香恋には見せれない。
深呼吸して、冷静さを取り戻し、香恋の側に戻り手を握りしめた。
浮かれ過ぎて考えていたプロポーズの言葉は飛び、なかなか出てこない。
「…香恋、結婚してほしい」
ありきたりなプロポーズになる。
いい終われば、あんなに考えていた言葉が脳裏をよぎっていき、言葉を重ねて続けた。
「責任感からじゃないからな。香恋と一緒に歳を取りたいんだ。妊娠を知って俺は嬉しい。だから、安心して産んでよ」
本来なら、もっとスマートに言葉を並べていたのに、予定通りにはいかない。
「はい…もう、これ以上ないってぐらい幸せです」
「これから、一緒にもっと幸せの瞬間を増やしていこう」
「はい」
これで、余計な虫がつかないと安心したのだが…
それから数年後、我が子に嫉妬し、子供と香恋を取り合うようになるとは、この時の俺は、まだ知らない。
end