不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
主任らと数メートル離れて歩く俺たち。
目に見えるのは、主任の後を追いかける新入社員の中村だった。
小野田からしたら、仕事を覚えるより、入社早々に、恋愛に浮かれる中村が気に入らないらしい。
そういう真面目な面を持つところも好きだと思う。
「中村さん、丸わかりだな」
相手にもされていないのに、頑張っている。
その頑張りを仕事に向けてもらいたいと小野田は思っているのだろうなと。
「そうですね」
如月のあいづちは、心がこもっていない。
こちらはこちらで、主任に片思い中。ほんとは両思いなんだが、無自覚な主任は、彼女に恋してる事に気がついていない。
他人の恋愛の世話を焼くほど、お人好しではないので、俺は傍観するだけだ。
「主任には相手にされてないけど」
小野田らしくて、苦笑する。
「女子って、やっぱりあーいう子嫌いなんだ⁈」
「嫌い?あれを可愛いって甘やかす男達が嫌いです」
それを言われると自分に言われたようで胸が痛い。
決して、経理課の男は、中村を甘やかしているわけではない。
まだ、入社したばかり、辞められたら困るからだ。
「小野田さん、言うね。男もさ、あざといのわかってるんだよね。そういうのも可愛いけどさ僕は、気が強くて甘え下手な子が好きなんだ。ということで、俺と付き合ってみない?」