不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「はい、無自覚人。別に俺には関係ないのでいいんですけど、そろそろ、解散しません?」
「そうだな。中村さん、どうするかな?」
「俺は、無理ですよ。今から、小野田さんと二次会行くんで」
初めて聞いたようで優香は驚いているが、何も言わないということは、ついて行くつもりなのだろう。
なら…と、真顔で片手を小さく上げていた。
「私、タクシーで送って行きます」
「いやいや、女の子に酔っ払いを任せられないよ。酔った人間って、力抜けてるから女の子でもそれなりに重いよ。酔い潰したのは、俺だし、一緒に送っていくよ」
先程まで砕けた口調だったのに、私には、酔っていても、いつもの主任になるのは、私の態度のせいだろう。
「それじゃ、お願いします」
「こちらこそ、逆に迷惑かけるね」
それでも、主任と2人きり(酔い潰れた中村さんがいるけど)は、嬉しいもので、頬が緩んでいる気がする。
会計をしに行った主任が席を立つと、隣の優香が肘を突っついてきて、頑張れと唇を動かして笑った。
揶揄われ、『もう』と睨んだのだが、生暖かい目で見てくるので居た堪れなく、中村さんを起こしに立った。
優香と高木さんとはお店の前で別れ、会計の際、タクシーを頼んであった主任により、お店前に待機している車に乗った。