不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
煩悩と闘っているうちに、私の住まうマンションにタクシーが到着。
「主任、着きました。私、降りますね」
起こしてみたが、起きる気配はない。
タクシーの運転手さんとバックミラー越しに視線があえば、完全に迷惑そうな顔だった。
住所を告げても主任が起きなかった場合、運転手さんに迷惑をかけてしまうと言い訳して、こんなチャンスは2度とないと思うと、勢いをつける。
「主任、降りますよ」
「…うー、ん。き、さらぎ?」
「降りてください」
酔って寝ぼけている主任は、素直に降りてくれてたが、ふらついいる。
危ないな…と、手を繋ぐ。
初めて繋ぐ手の大きさにドキドキして、これから自分が起こす行動に、更にドキドキしている。
エレベーターで3階に上がる間も、主任は、まだ寝ぼけているのか起きているのになんの抵抗もない。
部屋の前で、チラッと隣の部屋のドアを見てしまったのは、週末になると迷惑な住人になる人が住んでいるからだった。
一度も会ったことがないが、引越しの際、挨拶に伺うと、彼女らしき人が彼シャツ姿で出てきて、目のやり場に困ったことを、ふと、思い出した。
「主任、入ってください」
ドアを開けて、寝ぼけている主任を部屋に誘導して、ベットまで連れて行って寝かせた。