不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
思わず、私の大好き主任を返してと言いたくなるが、目の前の男と同一人物で、私が恋した主任は、彼の一部分でしかないのだと気づかされただけのこと。
だからといって、そんなことで嫌いになれるはずもなく、予防線を張られても、私の気持ちは変わらない。
私とのことも今回限りだろう。同僚に手を出すつもりはなかったところを、私に襲わられて、酔いの勢いで抱いたのだろう。
「そうですか。せめて、これからは静かにお願いします。無理そうなら、ホテルでしてきてください」
なぜ?と首を傾げる主任。
「あの、さすがに主任と他の人がいたしてるのは聞きたくないので、かと言って、引越したばかりなので私が部屋を変えることもできませんし、その主任の為に毎回出かけるのも違うと思うので…お願いします」
「俺だって、さすがにそこまでクズじゃないつもりだけど…どうするかな⁈」
「えっ?」
「なんでもないよ。ところでお腹空かない?」
「ペコペコですね」
「よし、何か作ろう。キッチン借りていい?」
「私が作ります」
ベットに腰掛けた主任が、なぜか、唇にチュッとキスを落として、「無理させたから、お詫びに作らせて」と言い、いそいそと冷蔵庫を開けにいく。