不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
冷蔵庫をのぞいて、メニューを決めた様子の主任は、水を入れた鍋を火にかけ、その間に野菜を切り始める。手際よく作業している姿を見ると、普段からキッチンに立つのだろう。

スクランブルエッグとウインナーをのせたお皿にトマトを添えて、レタスとにんじんを千切りにしたコンソメスープ。そして、トースターで焼いたバターロールをのせたお皿を鼻歌を鳴らしながら、テーブルに並べていく。

「お待たせ、食べよう」

私の手を取り、ベットから立たせる際、上から下まで主任の視線がなぞっていく。

「…彼シャツ、可愛い」

彼じゃないですけど…ベットの中の甘い睦言は信用ならないが、こうして改めて好きな人からの可愛いは嬉しいものだった。

ご機嫌の主任からの視線に耐えられなくなり、「私、着替えます」といえば、「ダーメ。今日は、そのまま過ごしてもらうからね」

「えっ、主任、部屋に帰らないんですか?」

「帰ってほしいの?」

「…こういう時って、朝には帰るものじゃないんですか?」

「着替えには戻るつもりだったけど、せっかく明日も休みなんだし、一緒に過ごす気でいるけど、いや?」

私の腰を抱き、乱れている髪を耳にかける仕草は、どこか甘くなる空気に変わりそうで、「ご飯食べたら、帰ってください」と突っぱねた。
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