不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「原因はあれかもな」
主任が指さすビルは、老朽化から新しく建て直し先月リニューアルオープンしたばかりの駅と隣接した商業ビル。
中には、映画館もあるらしく、テレビで話題になっていた。
「中に映画館ができたらしいんですけど、カップルシートが多くあると話題になってました」
「へー、カップルシートね。如月は、座ったことあるの?」
「ありません。そもそも、彼氏なんて、ここ何年もいませんから、当分、座る機会もないです」
「いないんだ」
「いたら…あんなこと、しませんでした」
「あんなことって?」
意地悪く笑い、わからないふりに揶揄われてると思うと頬が熱くなる。
「主任って、意地悪なんですね」
「そうだよ。もう、知ってるだろうから、如月の前では、素の俺でいくことにした」
特別扱いされているようで、嬉しいと頬が緩みそうになる。
「会社での俺と違ってイメージ壊れた?」
「いえ、意地悪な主任も主任なので」
そもそも、そんなことで嫌いにならないし、益々、好きが溢れそうです。
主任を好きになったきっかけは、些細なことだった。
入社して、素敵な人がいるとは思っていたが、あくまで観賞用なイケメンって感じで、まだ、なんとも思ってもいなかった。