不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「…えっ、え。私だけじゃなく、高木さんも、きっと課長も…山崎さんも、主任のことわかってくれてますよ」
「男にわかられても嬉しくない。如月がわかってくれてるなら、それでいい」
そういうなり、にこりと微笑んで手を繋いできたのだ。
えっ…
ドキリとさせらてた上に、更にドキドキとさせられ、戸惑って、主任の顔を伺った。
「いや?」
首を左右にふり、いやじゃないと伝える。
繋いだ手から、ドキドキが伝わるんじゃないかと思うほど、私の心臓は高鳴っているのに、主任は、澄まし顔で、こんなことには慣れているのだろう。
緊張から、話の内容が頭の中に入ってこない。
それでも、会話は続き、目的とするお店に着いたらしい。
「足もとに気をつけて」
半地下になるらしく、階段を降りていき、木でできた重そうなドアを開けると、チリンと音が鳴る。
「いらっしゃいませ」
中は、昔ながらのバーのような雰囲気で、別世界のようだ。
カウンター内にいる白髪のおじさまが、主任に親しげに声をかけてきた。
「今日は彼女連れなんだな。テーブル席にするか?」
繋いでいた手に視線をやった白髪のおじさまは、揶揄うように笑う。