不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「今日は、ご飯を食べにきたので、お願いします」
「へー、なら、腕を振るわないとな」
ホールにいた店員により、中庭の見えるテーブル席に案内されて、向かい合わせで座り、繋いでいた手は離れてしまい、どこか寂しく感じる。
「ここ、飯も美味いし、飲み物も美味いよ」
メニューを広げて、何を食べようか相談中。
「どれも美味しそうで選べません。主任のお勧めってどれですか?」
「そうだな?この時期なら、新じゃがのアンチョビ炒めに、マスターおすすめの筍たっぷりの春巻き、白エビのピザとか、どう?」
「賛成です。どれも大好きです。ついでに、ローストビーフのせ彩りサラダもいいですか?」
「いいんじゃないか。食の好みが合うっていいな」
そう言って、前のめりでテーブルについていた手を握られる。
すっかり忘れていた頃のドキドキが、不意打ちの仕草にドキンドキンとパワーアップさせられる。
「飲みものは、どうする?」
「主任は、どうされますか?」
「俺は、ビール」
「…私は…」
「遠慮せずにお酒飲んでよ」」
「ビールの苦味が苦手で。飲めるんですけど、こういうところで飲むお酒って知りませんし、主任のお勧めがあれば試してみたいです」