不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「ふふふ、しません。あれは、お酒の勢いで、つい…」
「つい?」
「いえ、なんでもありません。もう、襲ったりしませんから主任も忘れてください。なかったことにして、月曜からは、また、同僚としてお願いします」
「…なんだよ。それ…」
「えっ、主任は同僚と関係を持つ気はなかったんですよね。それなのに、私が襲ったから、あんなことになったわけで、なかったことにするのが一番かと思ったんです」
「…」
黙って、ムスッと顔を顰める主任。機嫌が悪くてもイケメンで、最強にかっこいい。
「もしかして、主任からなかったことにしようっていうつもりが、私からきりだしたから、怒ってます?」
「バカか。そんなに小さな器してないわ。ほんと、…バカだよな」
この時の私は、主任のプライドを傷つけたのだと思っていた。
そこから、会話は進まず白髪のおじさまからのサービスのデザートを食べると、食べるものがなくなり帰ることになる。
『ご馳走様でした』と、お礼をいい帰宅する道も、行きと違って、手を繋ぐわけでもないし、会話があるわけでもない。
ただ、彼の横を歩いている。
普段なら、余計なことなんていわないようにしているのに、つい、余計なことをうっかり言ってしまったらしい。