不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

「ふふふ、しません。あれは、お酒の勢いで、つい…」

「つい?」

「いえ、なんでもありません。もう、襲ったりしませんから主任も忘れてください。なかったことにして、月曜からは、また、同僚としてお願いします」

「…なんだよ。それ…」

「えっ、主任は同僚と関係を持つ気はなかったんですよね。それなのに、私が襲ったから、あんなことになったわけで、なかったことにするのが一番かと思ったんです」

「…」

黙って、ムスッと顔を顰める主任。機嫌が悪くてもイケメンで、最強にかっこいい。

「もしかして、主任からなかったことにしようっていうつもりが、私からきりだしたから、怒ってます?」

「バカか。そんなに小さな器してないわ。ほんと、…バカだよな」

この時の私は、主任のプライドを傷つけたのだと思っていた。

そこから、会話は進まず白髪のおじさまからのサービスのデザートを食べると、食べるものがなくなり帰ることになる。

『ご馳走様でした』と、お礼をいい帰宅する道も、行きと違って、手を繋ぐわけでもないし、会話があるわけでもない。

ただ、彼の横を歩いている。

普段なら、余計なことなんていわないようにしているのに、つい、余計なことをうっかり言ってしまったらしい。
< 44 / 183 >

この作品をシェア

pagetop