不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「あっ、そうでした」
なら、数メール先の部屋まで送ってもらうことにする。
「待っててください」
玄関先に主任を残して、紙袋を手に出ると玄関の中にいる主任。
特に気に留めなかったのだったが「洗ってあります。ありがとうございました」と紙袋を渡すなり、腕の中に囚われて唇が塞がれていた。
軽く舌を絡めて堪能すると、チュッと音を立てて離れたキスは、とても甘酸っぱく感じる。
「…ん、いい顔。おやすみ。戸締りしっかりな」
そう言って、頭を撫でて帰って行った。
なんなんですか?
言われた通り鍵を閉めて、よろよろと歩きながら、唇を手のひらで覆う。
こんなの、おかしい…
主任にとって、彼女でもない人にここまでするのが、通常運転なのかと思うと、恋人のような扱いをされて嬉しいのに、自分だけじゃないと気がつくと、モヤモヤとしてくる。
何が、如月は特別ですか?
主任にとって、数いるセフレの1人になっただけでしかなく、自分以外にも同じことをしている主任を想像すると、胸が張り裂けそうで悲しかった。
それでも、明日、会社で会うのだ。
今まで以上に、気をつけて好きが溢れないように心がけようと決意するのだった。