不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
『おれ、今、前行った店で一人で飲んでるんだけど、来ない?』
嬉しい誘いに、靴を履き、部屋を速攻で出て小走りで歩きながら返信。
『今、向かってます』
『待ってる』
お互い、短い文章で、なんの甘さもないのに、私の心は弾んでいる。
半地下を降りてドアの前で、身だしなみをチェックして、ドアを開ける。
チリンと鳴るベルに彼が振り返り、微笑んだ。
左目の黒子が、今日は、やたらとセクシーに見えるのは、疲労感からくる気怠さがあるからだろうか?
「お疲れ様です」
「香恋も、お疲れ様。何飲む?」
「えっと、ジンフィズ⁈お願いします」
「他にもあるよ」
「好きなんです」
「えっ?」
戸惑う主任に、言葉足らずだと気がついて慌てて言葉を被せた。
「私、気に入って、好きになったら一途にそればっかりになちゃうんです」
「好きになったら、一途か…」
「そうなんです。だから、ジンフィズお願いします」
「心代わりしない?」
「しませんよ」
「ふーん。マスター、ジンフィズ作ってよ」
「あっ、この間のデザートありがとうございました。とても美味しかったです。もう、とろける感触が忘れられなくて、今日は、自腹で食べます」