不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
「そう。気に入ってくれたなら、嬉しいよ。また、出してあげるから、こいつ抜きでも、飲みにおいで」
「マスター、デザートで釣るのやめてくれよ」
「いや、俺の奥さんのデザートを美味しいって言ってくれて、かわいいじゃないか。俺の孫息子の嫁にならないか?デザート食い放題だ」
「孫息子って、まだ、大学生だろ」
「立派な大人だ」
「はぁ、ありえない」
「なに、ムキになってるんだ?」
「なってないわ」
会話の中で、そっとジンフィズが出てくる。
「いつかは、心変わりするだろ。気が変わったら、教えてね」
マスターの冗談に苦笑いし、ドリンクをいただいた。
「ほんと、マスターの作るジンフィズ美味しいですね。何杯でも行けちゃいます」
「ありがとう。でも、度数強いくせに…飲みやすいから男が女を酔わせるのに、うってつけの酒だ。隣の男に気をつけてな」
「主任も、そんなこと言ってましたよね」
「こいつのは、俺の受け売りだろ。お嬢ちゃんの前でかっこつけてたんだろう」
「はぁー、勘弁してくれ」
カッコ悪く項垂れる主任の新たな一面に、キュンとくるものがあった。
よくよく話を聞けば、学生の頃、主任はここでアルバイトをしていたとのこと。
それで、マスターともフレンドリーだったのだ。