不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

その一言を課長ではなく、主任が穏和な声でいうことで、その場が雰囲気よく活気付くのだ。

そこへ、課長のデスクの内線電話がなり、恐ろしい形相が、眉間にシワを寄せ更に恐ろしくなっていく。

「こっちだって人手が足りないんだよ。能無しの集まりか?他部署に応援要請するな」

ガチャンと響く受話器を置く音に、皆が肩をすくめる。

「高木行けそうか?行けるなら中村と、棚卸しの手伝いに行ってこい」

なんだかんだと言いながら、頼られると断れない課長。

「大丈夫です。小野田さん、データ入力終わったので、後、お願いします」

そういい、出ていく一年先輩の高木さん。

そして、『私も行ってきます』と素早く一緒に出て行く中村さん。

中村さんは領収書の束に嫌になっていたので、生き生きとして出ていった。きっと…

「如月さん、後で手伝えると思うから、もう少し一人で頑張れる?」

主任の声に

「あっ、はい。一人で大丈夫です」

と、抑揚のない声で、顔を向けずに無心で作業を進めていく。

「…そう?手伝いが必要なら、言ってね」

主任の声が、どこか硬さがあるのは、自分のせいだとわかっているが、変えようがない。
できないのだ…。
< 8 / 183 >

この作品をシェア

pagetop