不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
その一言を課長ではなく、主任が穏和な声でいうことで、その場が雰囲気よく活気付くのだ。
そこへ、課長のデスクの内線電話がなり、恐ろしい形相が、眉間にシワを寄せ更に恐ろしくなっていく。
「こっちだって人手が足りないんだよ。能無しの集まりか?他部署に応援要請するな」
ガチャンと響く受話器を置く音に、皆が肩をすくめる。
「高木行けそうか?行けるなら中村と、棚卸しの手伝いに行ってこい」
なんだかんだと言いながら、頼られると断れない課長。
「大丈夫です。小野田さん、データ入力終わったので、後、お願いします」
そういい、出ていく一年先輩の高木さん。
そして、『私も行ってきます』と素早く一緒に出て行く中村さん。
中村さんは領収書の束に嫌になっていたので、生き生きとして出ていった。きっと…
「如月さん、後で手伝えると思うから、もう少し一人で頑張れる?」
主任の声に
「あっ、はい。一人で大丈夫です」
と、抑揚のない声で、顔を向けずに無心で作業を進めていく。
「…そう?手伝いが必要なら、言ってね」
主任の声が、どこか硬さがあるのは、自分のせいだとわかっているが、変えようがない。
できないのだ…。