不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
可愛くない物言いに、真向かいに座る同期の小野田 優香が、作業の合間に小さなメモを投げてきて、『バカね』と短い文で叱るのは、私が、主任に好意を寄せていることを知っているからだった。
こんな時は、中村さんなら、どういうのだろうと考えてみる。
『手伝ってくれるんですか⁈嬉しいです。それまで頑張ってます』なんて、あざと可愛くキャハ、ウフッと効果音つきでいう彼女が想像できて笑ってしまう。
自分にない可愛いさを全面に出す彼女が羨ましくて、嫌うより、感心している。
そうこうしているうちに、100万円足りない分が、納期に間に合いそうで目星がつくと、皆、ホッとする。今月も売り上げ目標を落とすことがなかったのは、これも、鬼神様のどう喝、いや、導きなのだろう。
そして、落ち着けば、いつもいうセリフは決まっている。
「営業の奴ら、毎回、月次締日に提出ってアホなのか?如月、締日は2日前だったはずだ。俺は、受け取るなって言ってるよな?」
「はい」
そう言われても、受け取らなければならない領収書もあるので、断れないのだ。
「なら、どうしてだ?この山の束は?」
これは、私のせいじゃないんですけど。