不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ

自分の気持ちに気がついた今、タイミングを見計らい、お互いの気持ちを打ち明け、恋人同士になるのが、今日中のミッションだと自分へプレッシャーをかけた。

そこへ、アイスコーヒーを運んで来た若い店員が、手を握りあう俺たちに、顔を真っ赤にさせて下がっていった。

「あそこのカップル。マジ、やばい。ケンカしてたカップルみたい。彼氏の方が、テーブルの上で手を繋いで仲直り仕掛けてるんだよ。ドラマみたい。あそこだけ甘すぎなんだけど…鼻血出そー」

先程の店員らしき女が、興奮し早口で声をあげている。

目の前の香恋にも聞こえているらしく、赤い顔が、更に真っ赤になって羞恥で目を潤ませる。

可愛いな…

握る手から、無意識に抜け出そうとする手をぎゅっと握る。

「俺たち、そういうふうに見えるらしいぞ。鼻血出そーって、おもしれー。なら、ケンカ中カップルは期待に応えないとな⁈」

これ幸いと、香恋の手の甲に唇をのせた。

するとまた、店員からの興奮する声に、つい、笑いがでる。

おいおい、接客業なのに、大丈夫か?

それでも、止める気はない俺は、香恋を愛おしく見つめ続けるが、恥ずかしがって口を聞いてくれない。

羞恥で、居た堪れなくなっただろう香恋は、席を立ち帰ろうとレジへ。

その後を追いレジへ行くと、先ほどから黄色い声を上げていた店員が、頬を赤らめ期待顔で待ち構えていた。
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