いたい、いたくない
「……千花、噛ませて」
「……」
「優しくするから…」
「……」
「逃げても、殴っても、一生嫌いなままでもいいよ……だから、噛ませて」
ホントなら、わたしはここで拒絶して
この空間から飛び出すべきだ。
わたしに触れる真純くんの手は、今すぐにでも振り払えるくらい、弱くて優しい。
そしてほんの少し、震えてる。
いやなのに嫌いなのに
振り払うことなんて、できなかった。
わたしはほとんど無意識に、うなずいていた。