いたい、いたくない
いたい、いたい
心がどうしようもなく、いたい。
「わたしも」
──そう返してあげられないのが
どうしようもなく、いたい。
「10秒。この手を離したら、10秒だけ目をつぶってて。俺はその間に消えるから」
否応なく、手を離された。
そして真純くんが背を向けるほんの一瞬
切なさに潤んだ瞳が見えた。
濁りきっていたその色には
一粒の光が小さく存在していた。
そして再び暗闇が訪れて
ドアが閉まる音が響いた。
たった一人残されたわたしは
目を閉じたまま泣いた。