令和最愛授かり婚【元号旦那様シリーズ令和編】
望まぬ妊娠
この世に誕生して、三十一年。
いつの時代においても品行方正、親や先生から怒られたこともないイイ子だったとは言わないまでも、私は自分なりに清く正しく生きてきた……つもりでいた。
それなのに。


背もたれのない不安定な丸椅子に腰かけ、肩を縮めた私に、


「妊娠八週目。三カ月ってとこですね」


白衣の女医さんは表情も変えずに、さらりと無情な宣告をした。
一瞬にして固まった私に構わず、クルッと椅子を回転させて、デスクに向かってしまう。


「どうされます? 産みますか?」


マウスを操作して、パソコンモニターを見遣ってから、そう問いかけてくる。


「……え?」


私は、先の宣告で思考回路がショートしたまま、女医さんと同じ方向にぼんやりと目を向けた。
私からではよく見えないけれど、モニターに映し出されているのは、私の電子カルテだ。
なにが記載されているかは、もちろんわかる。


安達(あだち)珠希(たまき)、三十一歳。
中堅出版社勤務。
職務は入社以来一貫して雑誌編集。
都内の1Kマンションでひとり暮らしの〝独身〟――。


産婦人科で妊娠診断を受ける時って、医師は満面の笑みで『おめでとうございます!』と言うものだと、勝手なイメージを持っていた。
だから、この女医さんのテンションは低すぎて、冷淡に感じてしまったけど、いや、今の時代、これが正しいのだろう、と思い直す。
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