叶わない、それでも……
本来なら天使の仕事だったんだけど、地獄の番犬であるケルベロスが天使たちの住む天国に脱走して、そこで大暴れしちゃったんだよね。何百人もの天使が犠牲となったからその罪滅ぼしに天使の仕事をしてるってわけ。

でも、僕は悪魔という立場だ。悪魔らしくその人間を護る。

天使は護る対象者以外にも気を配り、助けることも多い。でも悪魔は違う。邪魔だと判断した場合には命を奪い取ることも普通だ。それで前に天使からクレームが来たらしいけど、知ったこっちゃない。

「それで僕が護るのはどんな奴だ?」

僕は上司から貰った対象者のことが記載された紙を見る。ここに家族構成やら性格やらが書かれてるんだ。

「金持ちの娘ねぇ……」

僕が次に護るのは、クララという名前の大金持ちの娘だ。四人兄弟の末っ子で今は七歳と書いてある。

「子どもだろうが金持ちって嫌な感じするんだよな。ハズレくじ引いたな」

金持ちの人生って見ていてつまんない。護る必要があるのか疑いたくなる。
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