叶わない、それでも……
「そんな汚らしいものに触っちゃダメよ!今すぐみんな中に入りなさい!」

それだけ言い、母親はパーティー会場の中へ戻っていく。子どもたちもそれに従い、中へと戻っていった。

でも、クララだけはその場から離れなかった。心配そうに雛を見つめた後、綺麗なドレスが汚れるというのに地面に膝をつき、雛をそっと手のひらに乗せた。

「まだあったかい。どうしたらいいの?」

その目には涙が溜まっていた。さっき泣いていた女の子とは違い、雛を心配する涙だ。その涙を見た刹那、僕の胸が不思議な音を立てる。こんなに優しい人に会うのは初めてかもしれない。

これ以上、クララの悲しんでいる顔を見たくなくて、僕は力を使って雛の傷を治してあげた。

「えっ!?」

雛が元気になったことにクララはとても驚いていた。でも、「よかったね!小鳥ちゃん」と花が咲いたように笑う。その笑顔に胸が熱くなった。

その日僕は、初めて恋というものを知った。
< 6 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop