叶わない、それでも……
恋とか愛ってくだらないものだと思ってた。悪魔ならそう思うのが当たり前だ。愛し合って結婚したとしても、数年経たずに離婚なんてよく聞く話だ。恋や愛なんてすぐに消えてしまう。

だから、悪魔は恋や愛といった類を感じることはない。それを知るなんてずっと馬鹿らしいと思ってた。でも、恋や愛ってこんなにも温かいものなんだな……。

クララを見護り始めて数年。クララは十八歳になって美しさにさらに磨きがかかっていた。誰もがクララを見つめ、その美しさに魅了されているのがわかる。

そんなクララは、自宅に置かれたピアノを弾いている最中だ。優しいピアノの音色はクララそのもののようだ。心地いい音色に目を閉じる。

クララがずっと幸せでありますように、気が付けば、人間がよくするように神に願い事を唱えていた。

僕はずっとそばで君を見ているから知ってる。君が今、同じクラスの男子に片想いをしていることを。その男子も君のことが好きなこと。全部見ているから知ってる。
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