Dear my star

二人は長谷川先輩が卒業した三月にお付き合いを始めて、くっついたり離れたりを何度もくり返しながら、しっかり愛を育んでいるようだ。

郁ちゃんの左手の薬指に輝く婚約指輪が、ふたりのこれからを物語っていた。


「ホテル、近いんでしたっけ? 先にキャリーケース預けに行きますか?」

「お、頼める?」

「大丈夫ですよ、任せてください!」


ちゃり、と手の中にある車の鍵を鳴らした。

大学3年生になってバイト代を貯めて買った中古車のマイカー。

アメリカだと何処へ行くにも遠くて、出かける際は車があった方が便利だと正樹叔父さんから聞かされていた。

だから大学に入学してからすぐにアルバイトを始めて、コツコツ貯金していたのだ。


「まさか真佳が運転する車に乗る日が来るとわねぇ」

「お前はもうちょっと運転の練習しろ、ペーパードライバーめ」


後部座席で夫婦漫才さながらのノリツッコミを繰り広げる二人にふふ、と笑みをこぼす。

会えなかった時間はあっという間に埋まって、またすぐにあの頃のように戻れる。


それがたまらなく心地よかった。



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