Dear my star
その日の夜、郁ちゃんたちが泊まるホテルの近くにあるビストロでまた再開した私たちは、赤ワインで乾杯して、そのお店のイチオシらしい生牡蠣をつまみに昔話に花を咲かせた。
「そうそう、陸がノリっノリで帽子屋のコスプレ着るもんだから、ほんとおかしくって」
「郁ちゃんのアリスも可愛かったよ?」
話は自然と高校時代の思い出に遡る。
初めは思い出すのも苦しかった思い出も、六年経てばアルバムの中の写真と一緒。
目を細めて「懐かしい」と微笑むことができるようになった。
はー、と満足気にため息をついた郁ちゃんがワイングラスの縁を指でなぞった。
そして少し迷うように視線を彷徨わせたあと、残りのワインをくいっと煽ってテーブルの上に置いた。
「あのさ……っ!」
すぐ何を聞こうとしているのかが分かって、苦笑いで首を振った。
「連絡なら取り合ってないよ。6年前から一度も。お兄ちゃんがどうしているのかも知らないし、向こうも私がどうしてるのかは知らないと思う」