七色の魔法使い#7~七色の願いは滲んで消える~
僕は、朝から魔法で姿を消して町を歩いていた。

頬に当たる冷たい風、まだ静かな町、朝焼けの空、澄み渡る空気。

今感じてる不思議な感覚、僕は好きだ。

吹いた風が、僕の髪を揺らす。長い坂を登った所にある自然豊かな小さな公園から、僕は木で出来た柵に手をかけて町を見下ろした。

都会とも田舎とも言えない町並みが広がってる。

「……」

僕は景色を見ながら、1年前のことを思い出した。

……もう皆と出会ってから1年になるのか。早いな。

そんなことを思ってると、近くから妖魔の気配を感じて後ろを向く。僕の後ろでは、大きな妖魔が僕を見据えていた。

「……っ!」

僕はいきなり襲ってくる妖魔の攻撃を防ぎ切れず、体が吹き飛ぶ。そのまま僕の体は、柵を越えて崖へと放り出された。

ふわりと体が浮く感覚を最後に、僕の意識は途切れた。



「……」

僕が目を覚ますと、木で出来た天井が見えた。体を起こすとどこかの和室で横になってみたいで、縁側には僕に背を向けて誰かが座ってる。

僕の視線に気付いたのか、誰かはゆっくりと僕の方を振り向いた。

……え?凛……兄?

凛兄は僕と目を合わせると、優しく微笑む。

「……凛兄、一体ここはどこなの?僕は、どうしてここに……」

凛兄はキョトンとした顔をした後、ふふ、と笑った。
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