全身全霊、きみが好きだ!
こんな人間になりたい、だとか。あんな人間になりたい、だとか。そんな風に思うのはきっと、自分がそうでないことを自覚しているからだろう。
俺は、思っていた。好きな人の幸せを願える人間になりたい、と。そういう人間でありたい、と。今まで好きになったコ達に対しても、そう思っていた。
「ごめん。言うべきかどうか迷ったんだけど、」
「……え、あ、ううん。驚いたけど、」
「……あのさ、これ、」
なのに、今は全く願えない。
携帯を取り出し、悠真とのトーク画面を開いて、それを月島さんに渡して見せれば、アーモンド型の瞳が、これでもかというくらいに見開かれた。
「…………こ、れ、」
「悠真が、見かけたらしくて。でも、さ、まだ、」
「…………腕……組んでる、よね……?」
「……う、ん」
「もしこのふたりが友達なら、腕なんて、組まない、よね……?」
「……まぁ、少なくも俺は、組まない……かな」
「だよね」
みしり、彼女の手の中にある四角が何やら嫌な音を立てる。それでも別にいいと思えるくらいには、そのまま携帯も何もかも壊して、そんな奴そこら辺に捨てて、俺にしなよと言いたくなる。俺なら、きみを泣かせたりしない。
「清花」
だから、だから、と耐え切れず言語化した欲望達が飛び出そうになったその時、まるでお前の出番はないのだと言わんばかりのタイミングで件の男の声が彼女の名前を呼んだ。