義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「落とさないようにしないとね」
言い合いながら、一人の子が持ってきた線香花火を一本もらって、ろうそくから火をつける。
じじ、と音を立てて燃えだした線香花火。こんなところで落としてしまわないように気を付けながらしゃがんだ。
手にした花火に嫌でも意識は集中する。
火のついたところはじじっと音を立てながら丸くなっていく。そしてそのうち、ぱち、ぱちっと弾けはじめた。
とても綺麗。
ちらっと周りを見る。
楓も、雲雀も、ほかの子も……真剣に見入っている。それぞれお願い事があるのだろう。
恋のお願いとか、もしくは楓はバレー部で選手に選ばれますようにとか、そういうものもあるかもしれない。
願い事を託して弾ける線香花火。
お願いごと、叶いますように。
梓も自分の線香花火に視線を戻して、黄色の火花を散らしながら咲く様子を真剣に見つめた。
願い事。
さっきは『渉と花火大会に行きたい』だった。
けれど、今はなぜか違うお願いが浮かんできた。
渉への気持ち。
『好き』という気持ちは受け入れた。
お兄ちゃんとしても、恋をしているひととしても、はっきり『好き』だといえる。楓は別として、ほかの友達なんかに話すのは別としても、だ。
自分の中では肯定した。
だから、その次のこと。
少しでも前に進めますように。
恋の気持ちを伝えるのかはわからない。まだそういう決意はできなかった。
だっていろいろ考えることはあるだろうから。いくら結婚ができたりする、恋の関係になってもおかしくない義理の繋がりとはいえ、兄妹であるので。
だから、お願いはまだあいまい。でも梓の中では大きな変化だった。
『少しでも前に進めますように』
それが告白なのか、それとももう少し一緒にいて、気持ちを確かめることなのか、それははっきり言えないけれど。
少しでも自分の中の『好き』を進めたい。なにより大切な感情だから。
そのうち、ぱちぱち弾ける花火は小さくなって、やがて暗くなって、終わってしまった。
最後まで見届けて、梓は詰めていた息を吐く。
うまくいった。
きっとお願いは叶うだろう。
花火が終わってしまうのは物悲しい。けれど、弾けていた美しい火花は心の中にしっかり焼きついた。
きっとそれがお願いを叶える力になってくれるから。
「みんなうまくいったじゃん」
楓が立ち上がってにこっと笑った。楓も綺麗に花火を保って、自然に消えるまで持たせていたのだ。
「もっちろん! 落としたりしたら絶望したかも」
「そうだよねぇ。今ばっかりはね、落とすわけにはいかないから」
なにをお願いしたか、などは話さなかった。
なんとなく、胸にしまっておくほうがいい気がしたので。
打ち上げ花火を見ていたときとはまったく違う空気。
神妙ともいえるこの時間の中では、胸の中に大切な気持ちを抱えておくこと。
それはとても神聖で、宝物を扱うような気持ちになれたのだ。
言い合いながら、一人の子が持ってきた線香花火を一本もらって、ろうそくから火をつける。
じじ、と音を立てて燃えだした線香花火。こんなところで落としてしまわないように気を付けながらしゃがんだ。
手にした花火に嫌でも意識は集中する。
火のついたところはじじっと音を立てながら丸くなっていく。そしてそのうち、ぱち、ぱちっと弾けはじめた。
とても綺麗。
ちらっと周りを見る。
楓も、雲雀も、ほかの子も……真剣に見入っている。それぞれお願い事があるのだろう。
恋のお願いとか、もしくは楓はバレー部で選手に選ばれますようにとか、そういうものもあるかもしれない。
願い事を託して弾ける線香花火。
お願いごと、叶いますように。
梓も自分の線香花火に視線を戻して、黄色の火花を散らしながら咲く様子を真剣に見つめた。
願い事。
さっきは『渉と花火大会に行きたい』だった。
けれど、今はなぜか違うお願いが浮かんできた。
渉への気持ち。
『好き』という気持ちは受け入れた。
お兄ちゃんとしても、恋をしているひととしても、はっきり『好き』だといえる。楓は別として、ほかの友達なんかに話すのは別としても、だ。
自分の中では肯定した。
だから、その次のこと。
少しでも前に進めますように。
恋の気持ちを伝えるのかはわからない。まだそういう決意はできなかった。
だっていろいろ考えることはあるだろうから。いくら結婚ができたりする、恋の関係になってもおかしくない義理の繋がりとはいえ、兄妹であるので。
だから、お願いはまだあいまい。でも梓の中では大きな変化だった。
『少しでも前に進めますように』
それが告白なのか、それとももう少し一緒にいて、気持ちを確かめることなのか、それははっきり言えないけれど。
少しでも自分の中の『好き』を進めたい。なにより大切な感情だから。
そのうち、ぱちぱち弾ける花火は小さくなって、やがて暗くなって、終わってしまった。
最後まで見届けて、梓は詰めていた息を吐く。
うまくいった。
きっとお願いは叶うだろう。
花火が終わってしまうのは物悲しい。けれど、弾けていた美しい火花は心の中にしっかり焼きついた。
きっとそれがお願いを叶える力になってくれるから。
「みんなうまくいったじゃん」
楓が立ち上がってにこっと笑った。楓も綺麗に花火を保って、自然に消えるまで持たせていたのだ。
「もっちろん! 落としたりしたら絶望したかも」
「そうだよねぇ。今ばっかりはね、落とすわけにはいかないから」
なにをお願いしたか、などは話さなかった。
なんとなく、胸にしまっておくほうがいい気がしたので。
打ち上げ花火を見ていたときとはまったく違う空気。
神妙ともいえるこの時間の中では、胸の中に大切な気持ちを抱えておくこと。
それはとても神聖で、宝物を扱うような気持ちになれたのだ。