義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
不思議な呼び出し
梓のスマホがいきなり小さく震えたのは、お風呂あがりのことだった。
花火大会のあとは、クラスの女子みんなで大浴場に入った。
女子同士とはいえ、裸を見せるのは少し恥ずかしかったけれど、お湯はとても気持ち良かった。暑い中で一日活動してきたあとなので、汗だくだったのだ。汗を流せてさっぱり。
さて、あとは部屋で少しくつろいでから消灯時間なのだけど。
サイレントにしていたスマホが急に震えたのだ。
あれ、なんだろう。友達とはほとんどみんな一緒にいるから送ってこられるはずはないのに。
梓は疑問を覚えた。
では家から、お父さんやお母さんだろうか。
それもないだろうと首をひねる。合宿中は、なにかあれば先生から家に連絡が行くゆえ、特に娘の無事を確かめたりする必要もない。
まぁ見ればわかるだろう。自由時間はスマホの使用が認められていたのではばかることもない。梓はメッセージ画面を開いて内容を確かめて。
途端、どくっと心臓が大きく跳ねた。
開いたのは、渉とのトーク画面だったので。
『別館一階の裏口で』
送られてきたのはそれだけ。
端的すぎた。
けれどわからないはずがない。
そこに来て欲しい。
それに決まっている。
梓は思わず、スマホを暗転させていた。胸に引き付けて周りに見られないようにする。覗き見をするような子はここにいるはずはないのに、ついそうしてしまったのだ。
どくん、どくん、と心臓が鼓動を刻む。
わかってしまったのだ。
『合同合宿。お前、夜、予定はあるか?』
『そういう計画がないんならいいんだ。危ないから行くなよ』
合宿前日。渉がわざわざ梓の部屋に訪ねてきたとき言ってきた、謎の言葉。
あれは言葉どおりの『危ないから行くなよ』という意味ではなかったのではないか。
この送られてきた『別館一階の裏口で』のためだったのではないか。
いや、きっとそうなのだ。
梓を呼び出すために、だったのだろう。ほかの計画に乗らないように。
渉らしくなかった。
こんな、合宿をこっそり抜け出すなんてことも。
しかもそれに梓を連れ出そうとすることも。
……なぜだろう。
次には思ってしまった。
しかし渉らしくないとはいえ、このメッセージを渉が送ってきたのは確かなことなのだ。
それなら行かないという選択肢はない。
梓はおそるおそるスマホを再び見た。そっと電源ボタンを押して、さっきの画面を出す。
確かに一度見た通りのことが載っていた。
『別館一階の裏口で』
梓はごくっとつばを飲んだ。返事なんて決まっていた。
『わかった』
震える指でそれだけ入力して、送信ボタンを押した。
既読がつくかは見られなかった。ちょっと怖くて。
ただ今は、この空間をどう抜け出すか。
考えることが重要だった。
花火大会のあとは、クラスの女子みんなで大浴場に入った。
女子同士とはいえ、裸を見せるのは少し恥ずかしかったけれど、お湯はとても気持ち良かった。暑い中で一日活動してきたあとなので、汗だくだったのだ。汗を流せてさっぱり。
さて、あとは部屋で少しくつろいでから消灯時間なのだけど。
サイレントにしていたスマホが急に震えたのだ。
あれ、なんだろう。友達とはほとんどみんな一緒にいるから送ってこられるはずはないのに。
梓は疑問を覚えた。
では家から、お父さんやお母さんだろうか。
それもないだろうと首をひねる。合宿中は、なにかあれば先生から家に連絡が行くゆえ、特に娘の無事を確かめたりする必要もない。
まぁ見ればわかるだろう。自由時間はスマホの使用が認められていたのではばかることもない。梓はメッセージ画面を開いて内容を確かめて。
途端、どくっと心臓が大きく跳ねた。
開いたのは、渉とのトーク画面だったので。
『別館一階の裏口で』
送られてきたのはそれだけ。
端的すぎた。
けれどわからないはずがない。
そこに来て欲しい。
それに決まっている。
梓は思わず、スマホを暗転させていた。胸に引き付けて周りに見られないようにする。覗き見をするような子はここにいるはずはないのに、ついそうしてしまったのだ。
どくん、どくん、と心臓が鼓動を刻む。
わかってしまったのだ。
『合同合宿。お前、夜、予定はあるか?』
『そういう計画がないんならいいんだ。危ないから行くなよ』
合宿前日。渉がわざわざ梓の部屋に訪ねてきたとき言ってきた、謎の言葉。
あれは言葉どおりの『危ないから行くなよ』という意味ではなかったのではないか。
この送られてきた『別館一階の裏口で』のためだったのではないか。
いや、きっとそうなのだ。
梓を呼び出すために、だったのだろう。ほかの計画に乗らないように。
渉らしくなかった。
こんな、合宿をこっそり抜け出すなんてことも。
しかもそれに梓を連れ出そうとすることも。
……なぜだろう。
次には思ってしまった。
しかし渉らしくないとはいえ、このメッセージを渉が送ってきたのは確かなことなのだ。
それなら行かないという選択肢はない。
梓はおそるおそるスマホを再び見た。そっと電源ボタンを押して、さっきの画面を出す。
確かに一度見た通りのことが載っていた。
『別館一階の裏口で』
梓はごくっとつばを飲んだ。返事なんて決まっていた。
『わかった』
震える指でそれだけ入力して、送信ボタンを押した。
既読がつくかは見られなかった。ちょっと怖くて。
ただ今は、この空間をどう抜け出すか。
考えることが重要だった。