義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
『好き』の答え
ホタルはとっくに逃げてしまっていた。梓の手の中にはもういない。
つぅっと去っていく光。
渉はそれに目をやった。視線だけで追いかける。
梓もぼんやりとそれを追った。
ふわふわと遠くなっていく黄色の光。
視線はそちらに向けたまま、渉は立ち上がる。
梓も夢を見ていた気になりながら立ち上がった。
ホタルの優しいひかりが見せてくれた、良い夢だったのだろうか。
けれど夢などではなかった。
渉の手が伸ばされた。
そして捕まえられたのは、今度は肩だけではすまなかった。
肩に触れたけれど、梓の背中まで腕が回る。
そっと梓を引き寄せて、抱きしめてきた。
まるでホタルを手に包んでいたときのような、優しい捕まえ方だった。
とくりと心臓が高鳴った。
けれどこれまでとはやはりまるで違うもので。
そう、一度渉に抱きしめられてしまった、廊下でのときとはまったく違っている。
こうあって当然のような。
そういう気すら覚えてしまった。
声も、言葉も出なかった。
怯えてしまったとか、緊張してしまったとか、そういうものではない。
こんなこと、初めてだというのに、なんだかパズルのピースが綺麗にはまるように、渉の腕の中におさまることはまったく自然のように感じてしまったのだ。
でも、抱きしめられた優しい腕。
その上のほうから降ってきた言葉には、さすがにどきんと心臓は跳ね上がった。
「……お前が好きだ」
それは普段なら聞こえもしないような小さな小さな声だったのに、梓の耳にしっかり届いた。
それほど距離が近いのだ。
まるで耳に直接吹き込まれたようだった。
「妹としてじゃなく。もちろんいとこなんて設定でもなく。一人の女の子として好きだ」
梓の胸が、かぁっと熱くなった。今度こそ顔は赤くなっただろう。
抱きしめられていることにも、急に意識してしまう。
どきどきと心臓の鼓動が一気に速くなる。
キスされたときも、抱きしめられたときも、落ちついてしまっているといってもおかしくないほど静かな気持ちだったのに。
それは渉の気持ちをはっきり表してくれる言葉だったからだろう。
『好き』の気持ちを持ってくれていることは知っていた。
恋の気持ちではなくても、どういう意味かはわからなくても、好きでいて大切にしていてくれることくらい、わからないはずがない。
けれどそう思いつつも、それに満足している、と思いつつも、やっぱり心から満足はできていなかったのかもしれない。
だって、渉の言ってくれた、『一人の女の子として』という言葉がこれほどに心を震わせる。
この言葉が、気持ちが欲しかったのだ。
梓は熱いほどに理解した。
まるで夢を見ているようだと思った。
ホタルを見て、その優しい光で夢を見させられたのだろうかと。
でももちろん夢であるはずがないのだ。
抱きしめられているあたたかな腕と胸も。
さっき胸にしっかり落ちてきてくれた、気持ちを伝えてくれる言葉も。
夢であるはずがない。
つぅっと去っていく光。
渉はそれに目をやった。視線だけで追いかける。
梓もぼんやりとそれを追った。
ふわふわと遠くなっていく黄色の光。
視線はそちらに向けたまま、渉は立ち上がる。
梓も夢を見ていた気になりながら立ち上がった。
ホタルの優しいひかりが見せてくれた、良い夢だったのだろうか。
けれど夢などではなかった。
渉の手が伸ばされた。
そして捕まえられたのは、今度は肩だけではすまなかった。
肩に触れたけれど、梓の背中まで腕が回る。
そっと梓を引き寄せて、抱きしめてきた。
まるでホタルを手に包んでいたときのような、優しい捕まえ方だった。
とくりと心臓が高鳴った。
けれどこれまでとはやはりまるで違うもので。
そう、一度渉に抱きしめられてしまった、廊下でのときとはまったく違っている。
こうあって当然のような。
そういう気すら覚えてしまった。
声も、言葉も出なかった。
怯えてしまったとか、緊張してしまったとか、そういうものではない。
こんなこと、初めてだというのに、なんだかパズルのピースが綺麗にはまるように、渉の腕の中におさまることはまったく自然のように感じてしまったのだ。
でも、抱きしめられた優しい腕。
その上のほうから降ってきた言葉には、さすがにどきんと心臓は跳ね上がった。
「……お前が好きだ」
それは普段なら聞こえもしないような小さな小さな声だったのに、梓の耳にしっかり届いた。
それほど距離が近いのだ。
まるで耳に直接吹き込まれたようだった。
「妹としてじゃなく。もちろんいとこなんて設定でもなく。一人の女の子として好きだ」
梓の胸が、かぁっと熱くなった。今度こそ顔は赤くなっただろう。
抱きしめられていることにも、急に意識してしまう。
どきどきと心臓の鼓動が一気に速くなる。
キスされたときも、抱きしめられたときも、落ちついてしまっているといってもおかしくないほど静かな気持ちだったのに。
それは渉の気持ちをはっきり表してくれる言葉だったからだろう。
『好き』の気持ちを持ってくれていることは知っていた。
恋の気持ちではなくても、どういう意味かはわからなくても、好きでいて大切にしていてくれることくらい、わからないはずがない。
けれどそう思いつつも、それに満足している、と思いつつも、やっぱり心から満足はできていなかったのかもしれない。
だって、渉の言ってくれた、『一人の女の子として』という言葉がこれほどに心を震わせる。
この言葉が、気持ちが欲しかったのだ。
梓は熱いほどに理解した。
まるで夢を見ているようだと思った。
ホタルを見て、その優しい光で夢を見させられたのだろうかと。
でももちろん夢であるはずがないのだ。
抱きしめられているあたたかな腕と胸も。
さっき胸にしっかり落ちてきてくれた、気持ちを伝えてくれる言葉も。
夢であるはずがない。