義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 その夜。お風呂から出てきて、リビングにて髪をタオルで拭いている渉を、梓は捕まえた。
 まだお風呂に入っていないので私服を着ている梓に対して、渉はすでに寝るときにも着るスウェットを着ている。リラックスタイムだ。
 こういう姿を見るのももうすっかり慣れてしまった。学園の王子様のこういうシーンに居合わせられるなんて、きっとぜいたくなのだろうけど、梓にとっては特別嬉しいことではない。
 というか、余計な羨望や嫉妬をほかの女の子から買うのでちょっと面倒なことですらあった。そんなことは渉にも女子たちにも言えるはずがないが。
「お兄ちゃん! 生徒会役員をやってるってほんとなの!?」
 わしゃわしゃと髪を拭いていた渉は、その手を止めて梓を見た。きょとんとしている。
「あれ、言ってなかったか」
「言ってなかったよ! だって集会でも特に……」
 生徒会役員、しかも副会長なんて重要な立場であれば、集会なんかで話をしたり、なにかほかにも働く様子なんかが見られたりするだろう。
 けれど梓はそういうものを見たことがなかった。ゆえに気付かなかったのであるが。
「集会では会長しか話はしないからな。俺はあくまでも副会長だから、今は別に」
 しれっと言われてしまった。梓は黙るしかない。
 そういえばそうだった。集会で話をするのは生徒会長のみだ。
 きっと副会長のお兄ちゃんもそばにいたのだろうけれど、近くに立っていただけとか、そういうことだったのだろう。それで梓はまだ集会も数回目で、その中にいて聞いているだけで精一杯だったから気付かなかったようだ。
「それで、副会長だったらどうなるんだ?」
 逆に質問されてしまった。梓は、う、と詰まる。これは少々言いづらい。今日のホームルームで決まってしまったことなんて。
 でも言わないわけにはいかない。言わずにいて、顔合わせのときにいきなり出くわして驚かれる……なんてのは困るし。
 梓はぼそぼそと言った。
「今日、クラスの役員を選ぶくじをやったんだけど……当たっちゃって……」
 渉の手が止まった。梓をじっと見る。驚いたような顔をしていた。
「……はぁ? マジかよ」
 数秒経って、やっと言った。梓はこくりと頷く。
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