義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
打ち上げはカラオケで
「ありがとうございましたーっ!!」
 握っていたマイクをおろして、冗談ぽく言ったのは楓である。小さなカラオケルーム、シャウトが入る激しい曲、楓が大好きな女性シンガーソングライターの歌を歌い終えたときだ。
 ソファに座っていたみんな、ぱちぱちと拍手する。
「やっぱ楓ちゃんは檸檬(れもん)ちゃんの歌がうまいね」
 楓の一番そばに座っていた雲雀(ひばり)こと、高天 雲雀(こうてん ひばり)が楓を褒める。雲雀も『檸檬ちゃん』、ロック寄りの歌を作って歌う志都呂 檸檬(しとろ れもん)が好きなのだ。
「えへへ、そう言われると嬉しいな」
 楓は嬉しそうに笑い、ソファに戻って座った。テーブルに置いてあったコップのジュースを飲む。
 楓は、今日は好んで着ているボーイッシュな服装をしていた。
 ボーイズライクなハーフパンツにシンプルなTシャツ。ただ、楓はボーイッシュな格好は好きだけれど、男子になりたいとかそういうタイプではない。
 単純にファッションとして好きなのだ。それに髪は割合長めで肩までさらっとストレートの黒髪が落ちている。梓と同じように、体育の時間は結ぶのだけど。
「今日の服も檸檬ちゃんぽいしね」
 楓のTシャツとハーフパンツ。確か志都呂 檸檬がこういう服を着ていて歌うPVがあった。楓に見せてもらったのだから間違いないだろう。
「あはは、ちょっと真似してみたんだ!」
「楓ちゃんに似合ってるよ」
 明るい顔をしてにこっと笑った楓に、梓も微笑みを返す。
 梓の服装は、膝丈のチュールスカートに、パフスリーブでかわいらしめのカットソー。
 楓とはまるで違うタイプ。でも転校してきて以来、一番の友達だ。
 今日は楓と、あと何人かの友達とカラオケに来ていた。
 週末に定期テストが終わった。その打ち上げだったのだ。みんなで「ぱーっと遊ぼうよ!」ということになり、カラオケに行くことに決まった。
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