義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 けれど梓はこの短いやりとりで察してしまう。この先輩は、きっと渉のことが気になるのだろう。
 もっとはっきり言えば、片想いをしているとか、そういうものなのかもしれない。
 よくあることだった。というか、梓は転校してきてからこっち、もう何回こんなシーンに出くわしたか知れないくらいだ。
 妹……というのは秘密だが、一緒に暮らしているいとこという設定はみんな知っている。よって、梓に「小鳥遊先輩って……」などと聞いてくる子も割合いた。
 渉は俗な言葉で言えば、モテモテなのである。梓の友達の雲雀もそうだし、同じクラスにだって、それらしき子がほかにもいる。
 ただ、渉に彼女はいないようだった。
 梓はそれがちょっと不思議だった。だって、高校生なのだ。先輩たちでは、彼氏彼女がいるという話もよく聞く。
 それが、モテモテ王子様の渉が彼女なしなのだ。だいぶ不思議だ。
 渉なんてかわいい子を選び放題だろうし……向こうから片想いされなくても、渉が告白すれば、ほとんどの女子は頷いてしまうのではないだろうか。
 でもその事実は梓にある種の優越感を感じさせていた。あまり綺麗な感情ではないので誰にも言えないし、言ったりしたらクラスや学校でねたまれて村八分などにされてしまうだろう。そういう危険すらあること。
 しかしその優越感、は確かに梓の中にあるのであった。
 端的にいってしまえば、自分が渉に一番近い女の子。
 そういう自負で事実である。
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