義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 妹であるけれど、同じ学校に通っている。毎日一緒に登校する。
 それ以上に、一緒に暮らしているのだ。
 ご飯も一緒、なにか買い物に出掛けるとか、ちょっとした家族ですることも一緒。
 それはとても嬉しいことだった。渉と一緒に過ごせるのは嬉しいだけでなく、とても幸せを感じられること。心が満たされるのだ。
 別にお兄ちゃんのことが好きなわけじゃないけど。
 梓はちょっと思って、すぐに、あれ、と思った。
 そんなことは当たり前ではないか。渉は『お兄ちゃん』であって、それ以上でもそれ以下でもない。
 だというのに、どうしてわざわざそんな確かめるようなことを思ってしまうのか。
 不思議に思ったけれど、そこで金糸先輩が「あら、そろそろチャイムが鳴るね。帰り支度をしよっか」と言った。
 つられるように時計に視線をやると、下校時間の五分ほど前になっていた。いつのまに。おしゃべりが楽しすぎて、時間が経つのを忘れていた。
 結局お兄ちゃんは帰ってこなかったな。
 梓は使っていたノートやペンケースをバッグにしまいながら思う。会議が長引いているのかもしれない。
 遅くまで大変だなぁ。会議ってだけでも疲れるだろうに。
 頭に浮かんだのは普通のことだったけれど、そのあと思ってしまった。
 でも、私は帰ってからお兄ちゃんに会えるんだ。
 顔を合わせられるんだ。
 おしゃべりできるんだ。
 なにを話そうかな。
 今日の生徒会のこととか。
 計算が早くなったよとか。
 思考したのち、数秒して、また、はっとした。だいぶ自己嫌悪を覚える。
 なんて性格の悪いことだろう。二年のあの先輩に対抗するようなことを考えてしまった。
 あの先輩は明後日まで渉に会えないだろうに、それを自分は。しかも自慢するような気持ちで考えて。
 けれど、お兄ちゃんに、渉に帰ってから会えるというのは、梓にとって喜びで特権を感じさせてくることに間違いはなかったのだった。
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